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ゾーラ・アカピャン、名コーチの導きで世界一へ「自分のことを誇りに持てるチャンピオンになりたい」=11.15K-1代々木第一

 11月15日(土)、東京・国立代々木競技場第一体育館で開催の「K-1 WORLD MAX 2025~-70kg世界最強決定トーナメント・決勝ラウンド~」の[K-1 WORLD MAX 2025 -70kg世界最強決定トーナメント・準々決勝]でアイメリック・ラジジ(フランス/MARSEILLE BOXE PIEDS POINGS)と対戦するゾーラ・アカピャン(アルメニア/Gridin Gym)が、インタビューに応じた。

 アカピャンは、“悩殺の貴公子”がニックネームのイケメンファイター。24年3月にK-1 WORLD MAX最強決定トーナメント開幕戦ではタラス・ナチュックから判定勝ち。続く7月の準々決勝はカスペル・ムシンスキと対戦するも、判定負け。今年7月は璃久をKOし、前回のMAX開幕戦ではジョナサン・アイウルを判定で下した。

 対するラジジは、WAKOとNDC王者で身長191cmの“マルセイユの巨塔”。25戦して1敗しかしていないが、その1敗は昨年5月に戦ったK-1レジェンドでGLORYとONE王者にもなったジョルジオ・ペトロシアンとの試合のみという強豪だ。今年のMAX開幕戦ではアビラル・ヒマラヤン・チーターを破っている。
――今回は、アカピャン選手のグリディンコーチ同席のもと、インタビューをお願いします。

グリディンコーチ「私が同席していいの?」

――もちろんです!名コーチにも話をうかがいたいです。

アカピャン「心強いね」

――早速ですが、開幕戦となったジョナサン・アイウル戦を振り返っていかがでしたか?

アカピャン「相手が強かったので勝てたことは良かったんですけど、いくつかミスをしてしまったので、そこは修正しなければいけないと思いました」

――ミスですか? ローキックで崩して完璧の試合に見えましたが。

グリディンコーチ「たしかに結果は大事ですけど、ある視点から見るとそんなに大切なことではありません。内容がどうだったのか、練習したことは出せたのか。いつも試合が終わった後に私は、何がうまく行ったのか、何が悪かったのか、選手自身に自己分析をさせます。それを元に、進化させるようにしています」

アカピャン「コーチからは、ミスが多かったと言われました」

――言える範囲だと、どんな点がありますか?

グリディンコーチ「まず、相手の圧力を感じて下がってしまったこと。下がったまま攻撃を受けて、チャンスがあるにも関わらずカウンターを返すことはしなかったんです。あとは、3R目にゾーラがやった両手を下げて相手に攻撃をさせる動き“クラッシュ”と呼んでいますが、それを1R目にできなかったことです」

――ノーガード戦法で誘うと。

グリディンコーチ「腕を下げることによって、相手に戦うことを伝えることと頭をリフレッシュしてリラックスする効果があります。それを早くやっていれば、もっと動きが良くなったと思います」

アカピャン「完全に忘れていました」

グリディンコーチ「ゾーラは、まだ30%くらいしか能力を出していません」

――開幕戦の試合は、30%の能力で戦ったと。

グリディンコーチ「いえ、これまでの試合すべてにおいてです。まだ蕾(つぼみ)の状態なので、これから先、インスピレーションを感じて動けるようになればようやく花開くことでしょう」

――まだ30%の能力で、そこまで強いんですね。むしろ幻想が出てきます。今回の反省点を次に活かすと?

アカピャン「いつも、反省点を指摘されて理解はしています。でも、改善点を試合で出すまでに至っていないことも多く、また理解できていないこともたくさんあります」

――試合は、やっていいこととやってはいけないことがあると思います。反復練習することでスキルを上げていると思いますが、グリディンコーチの要求するレベルは高い印象があります。試合中は、どうやって対応しているのでしょうか。

アカピャン「例えば早く倒して試合を終わらせたいと思いますが、その考えは良くないと指摘されます。なぜならば、うまくいかないことが多くなるからだと言われます」

――それは分かりますが、考えることが多いように思います。

グリディンコーチ「試合は予想外のことがたくさん起こります。そういった時のリアクションがいろいろあって、それをいかにできるかが大切です。武士道に、『戦いには戦術というものがない、あるのはシチュエーションだけだ』という言葉があります。目の前のシチュエーションに対して、どう向き合うのかが重要なんです」

中央がグリディンコーチ
――実に深い話です。アイウル戦に戻ると、かなりの強敵でしたがそこまでの強さは感じかなかったですか?

アカピャン「彼は肉体も精神も強かったです。もう少し早く試合が終わると思っていましたが、それ以上の強さを持っていました」

――ローキックで崩して行こうと思っていた?

アカピャン「いえ、コーチが言うように戦術は決めていませんでした。ラウンドが進むうちにローキックが入るようになり、そこが狙い目だと思い、状況に合わせて蹴っていきました」

――見事な試合でした。決勝トーナメントは準々決勝で、アイメリック・ラジジ選手と対戦します。身長191cm、テクニックもある。一番当たりたくない選手かなと思いました。

アカピャン「なぜですか?」

――背が高くリーチがあるため、難攻不落かなと。

アカピャン「私は、過去に215cmの選手を倒したことがあります。アマチュアの時ですが、ハイキックで倒しました。相手が前のめりになってきた時にハイキックで倒しました」

――では、ラジジ選手に苦手意識はないと。

アカピャン「むしろ得意ですよ。彼の足を見ましたか?細いですよね。まるでラーメンの麺のように見えます。箸でクルクルと巻いて、ツルっと食べてしまいますよ(笑)。私はラーメンが大好きなので、今回の相手もツルっと食べますよ」

――アカピャン選手は、ラーメンが好きなんですよね。

アカピャン「大好きです。1年前、日本で合宿した時にラーメンを食べてから、もう虜になりました。日本へ来た時は、いつも食べています。アイウル戦前も大盛りラーメンを食べたから、勝てました!」

――アカピャン選手は、あまり対戦相手を挑発するようなことを言わないですが、何かポリシーはあるのでしょうか?

アカピャン「シナ・カリミアン選手たちのようにトラッシュトークをやってほしいの?」

――いえ、そこまでは…。

アカピャン「私たちがやっている競技は、とても大変なスポーツです。どんな選手でも、必ず厳しいトレーニングをして、過酷な減量をしてリングに立っています。ですから、どんな対戦相手でもリスペクトを持って接するように心がけています。同じスポーツをやっているからこそ、同じ苦しみが分かります。コーチの教えで『相手を馬鹿にしたら、それは同時に自分のことを蔑むことになる』と言われています」

グリディンコーチ「いいこと言うね(笑)。でも、それは本当にそう思います。相手を馬鹿にすることは、それは即ち自分を否定することです。それは、あまりにも嘆かわしい」

――さすがは名コーチです。ではアカピャン選手は、どんな王者になりたいですか。

アカピャン「レベルの高いチャンピオンになりたいのはもちろんですが、人としても優れた人物になりたいです。いろいろな人が尊敬してくれるかもしれませんが、何よりも自分が自分のことを誇りに持てるチャンピオンになりたいですね」
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