2021.11.23

K-1 JAPAN GROUPの新たな取り組みとして、バリュエンスジャパン株式会社が運営するスポーツチーム公認オークション「HATTRICK(https://auction.hattrick.world/)」協力のもと、9月のK-1横浜アリーナ大会からスタートしたチャリティオークション。

このたび嵜本晋輔バリュエンスグループCEO、寄付先の一つである特定非営利活動法人 ジャパンハートの吉岡秀人 最高顧問、そして中村拓己K-1プロデューサーの鼎談が実現。ヒトでつなぐ、モノでつなぐ、スポーツでつなぐ=「地球をつなぐ」をテーマに語ってもらった。

・後編はこちら⇒https://www.k-1.co.jp/news/35416/

【前編】
――まず簡単に自己紹介からお願いします。
中村拓己K-1プロデューサー(以下、中村) 僕は立ち技格闘技のK-1のプロデューサーをやらせてもらっていて、今年で3年目になります。皆さんのイメージするK-1は「地上波放送していて、大きな選手が戦うエンターテインメント色の強い競技」だと思うんですが、組織を一新して新たにスタートしたのが僕らが運営するK-1です。「100年続くK-1」を目標に掲げて、ジムを展開してアマチュア大会を開催し、そしてプロの大会を開催してK-1のチャンピオンを決める。スポーツ競技としてピラミッドの構造を確立して、いろんな人に楽しんでもらおうと活動しています。その中で今回、ハットトリックさんとチャリティーオークションを開催させていただいて、収益をジャパンハートさんに寄付させていただいて。そのご縁で対談をさせていただくことになりました。よろしくお願い致します。

吉岡秀人ジャパンハート最高顧問/小児科医(以下、吉岡) 僕は専門は子供の小児科医ですが、元々、戦争や貧困で苦しむ子供たちを助けたいと思って医者を目指しました。1995年にミャンマーに行って、貧しい人たちに医療を提供したのが海外医療の最初です。ミャンマーは昔ビルマといって、当時は世界で二番目に医療事情の悪い国でボロボロでした。平均寿命が50歳ちょっとで日本の戦前くらいです。何が起こっているかというと5歳以下の子供が大量に死んで平均寿命をドンと下げている。それで日本からの慰霊団がその状況を見て「子どもたちの命を助けてほしい」と依頼が来て95年から医療を始めて、2004年にジャパンハートというNPOを作りました。「目の前の子供を助ける」という一念だったんですけど、やればやるほどお金が必要になりました。人とお金を集めないといけないので組織を作って26年目です。今はミャンマー、カンボジア、ラオスと5歳以下の子供がたくさん死んでしまう国の医療支援と、あとは日本国内のガンの子供たちのことをメインに活動しています。

嵜本晋輔バリュエンスグループCEO(以下、嵜本) 私どもの会社は一般消費者から時計、バッグ、ジュエリーだとか、あとは骨董品等をリアル店舗や出張買取でお譲りいただき、それをBtoBやBtoCという形で次の人につないでいくビジネスをメインに行なっているいる会社です。私のバックボーンとして、高校卒業と同時にガンバ大阪に入団しましたが、3年で戦力外通告を受けて退団して、22歳の時にサッカー選手を引退しました。当時、父親が大阪でリサイクルショップを経営してまして、私がサッカー選手を辞めるのと同時に「お前ら三兄弟で会社を設立して俺のビジネスを手伝え、継げ」と父親に言われてそこからビジネスはスタートしています。そして、2007年にスタートしたのが基幹ブランドであるブランド買取専門店「なんぼや」です。

――元サッカー選手から上場企業のトップという形でメディアに登場される機会も増えましたね。
嵜本 ガンバ大阪を戦力外通告になっているので、5年前から仕返しじゃないですけど、スポンサーをさせていただいて(一同笑)。本当に感謝の気持ちを込めてやっているんですが、ただお金を出すだけでは自分事になってないという感覚に陥ってきて「もっと自分事に出来て、サッカー界、スポーツ界に貢献できることはないか」ということで、「南葛SC」という「キャプテン翼」の髙橋陽一先生のサッカーチームに三分の一出資させていただいて、私自身も取締役に就任致しました。J1を目指して「東京23区で初めてのJリーグクラブを作る」ということを高橋先生を含めてチームで実現させていきたいと思っています。

――今後はご自身でチームの経営に本格的に乗り出すお考えはありますか?
嵜本 まだ三分の一の株式取得なので、マジョリティは高橋先生が持っておられます。高橋先生の強みは「キャプテン翼」というIP(知的財産)を持っておられることですけど、一方で営業はこれまであまりやってこられなかったところで。私たちバリュエンスグループはアジアやヨーロッパにリアル店舗で20店舗以上出店してますし、現地にも弊社のスタッフがおりますので、その機動力を生かして今は「キャプテン翼」のIP、漫画のキャラクターを使った商品を作りませんか、と世界のあらゆる企業に売っています。そこで生まれた収益を南葛SCの強化費に使っていく。「キャプテン翼」は不老不死ですし「疲れた」と言わないので(一同笑)、しっかりと活躍してもらえばチームも強くなっていく。サッカー界で初めてのモデルを今、やり始めています。

――今回のテーマが「つなぐ」。まさに嵜本代表が漫画のキャラクターとリアルなチームの強化をつないだお話ですね。この対談の発端となった「チャリティーオークション」も格闘技界で初の試みで、K-1選手、K-1のファン、ジャパンハートさんとバリュエンスグループさんをつなぎましたね。
中村 僕らの仕事は「イベントを開いて、お客さんに来てもらって、試合を見てもらうこと」なんですけど、それだけだとどうしても「つながり」が「試合を見に来てもらう」で終わってしまう。僕は元々記者だったんですけど、格闘技バブルの頃はお客さんが試合を見て終わり、テレビで見て終わり、ですべて終わってしまっていたんですね。結局、そこから何も広がらなかったことがブーム、バブルで終わってしまった原因なのではないかと。「もったいない。もっと何か出来たのに、なぜ出来なかったんだろう?」という思いがずっとありました。それを考えた時に、「K-1」というスポーツ競技をもっといろんな人に楽しんでもらうように、接点をたくさん作っていけば、もっとつながっていくんだろうな、と考えました。例えばジムを作ると、その場所にいろんな人が来て人とつながったり。それがアマチュアの大会に出てつながったり、プロの大会に出てつながったりだとか。いろんな形でK-1とつながる機会を作っていけば、様々な取り組みにつながるんじゃないか、とずっと考えていました。実は今回のチャリティーオークションも元々はジムで生まれたご縁がきっかけで始まった話なんですよ。

――そうでしたか。
中村 まさに僕らがやってきたジムという場所でつながって、そこからチャリティーオークションに、そして寄付という形で社会貢献活動につながりました。僕らがやりたかった形が1つ実現しました。スポーツはいろんな取り組み方や楽しみ方があると思うので、興行、イベントだけではなく「やる方のスポーツ」「見る方のスポーツ」「健康維持のためのスポーツ」と形を変えながら、そこでつながりを作っていくことが一番やるべきことではないかと。K-1というスポーツをプロデュースする側として一つの使命、役割だと思っているので。そのきっかけとして、今回の取り組みをこうしてお話できるのは、すごく嬉しいですし、とても意味のあることだなと思いますね。

吉岡 強さの基準が、前は本当に肉体的なことだけだったんでしょうね。人よりも肉体的に強ければいいんだ、というスタンス。

中村 そうですね。

吉岡 僕らの若い時に似てますよね。「金持ちだったらいい」だったんですよね。だから、死ぬまでお金を追求したんです。組織の規模とか利益を拡大して、それがダイエーに代表されるようなモデルだったんですね。

――借金を重ねて拡大するだけ拡大して、破たんしてしまいましたね。
吉岡 今、日本が苦しんでいるのは、経営者のお二人は分かると思うんですけど「安売り」という概念ですよね。それでずっと苦しんでいて、国全体が適正な値段をモノに付けられなくなって、みんな安売りになっていて。それに労働者も引っ張りこまれて苦しんでいる。それはまだこの社会が、ダイエーの中内さんたちが全盛だった頃のモデルから抜け出せていないんだな、と思うんですね。あの時代は「強ければいい」だけ、強さというものが肉体的な勝ち負けの強さだけを競っていたのだと思うんです。でも今は例えば復活する強さだったり、もっと言えば自分は負けるけど自分の弟子たちが勝つ強さだったりとか。あるいは自分の生きざまが周りの人に与える影響だったり。強さの概念が変化しているし、変えなければならないと思うんですよ。その中でK-1というものが生まれ変わって出てきたと思いますし。お話にあった前のK-1が消退していったのは、古い時代の価値観を背負っていたから消退していったと思うんですね。

中村 確かにそうだなと思いました。昔のK-1は「スターはこうあるべきだ」「こういう人じゃないとスターになれない」ということが確立されてましたけど、僕らのK-1はあえてそこを崩すじゃないですけど「こんな人も面白い、こういうところを目標にしてる人も面白い」とその人の生きざまを見せていくことを考えています。それが吉岡先生が言う「新しい強さ」で、いろんな人を見せていくことでK-1を目指す子たちを増やすことにつながっていたんだな、と思いました。

吉岡 人間、上ばかり見ていたら辛くなるじゃないですか。「こいつが出来るんだから、自分もやれるんちゃうか」で目指したり。今は一人のスポーツ選手に「完成されたイメージ」を貼り付けるじゃないですか。格闘家もサッカー選手もそうだけど「こんな凄いところがあるけど、こんないい加減なところもある」とか「凄い選手なのに奥さんの尻に敷かれてる」でもいいんですけど(笑)「こんな人もチャンピオンになれるなら、私もやろうかな」という人が増えると思うんですね。「これからはウェルビーイング」と言われますけど、アーティストたち、スポーツ選手も肉体を使ったアーティストですから、そういう人たちが今よりもっともっと価値を持つと思うんですよ。その生きざまを目指して、若い人たちがどんどん流入してくる。だから、もっと生きざまを見せていった方がいいんじゃないかと思いますね。

嵜本 スポーツのビジネスに通じるかもしれないですけど、これまでのビジネスは情報の非対称性で商売をしてた企業が大半で、情報格差が私たちの業界でいうと粗利につながっていました。企業と一般消費者の情報格差があって、企業が圧倒的に情報を持っていますから、一般消費者からすれば「自分らしさ」を掴みにくかったり、企業にコントロールされていた時代だったと思うんですよね。「誰かが買ってるから自分も買う」というような形だった時代から、今は誰もが当たり前のようにスマホを持ち歩き、誰もが自分の欲しい情報にアクセスできるようになってる状況の中で「ウソを見抜けるリテラシー」もついている。だから、自分らしく、自分の感度を優先していい。まだまだ少ないかもしれないですけど、そういった方がかなり増えてきていて。だからこれは若者を中心に今の10代、20代は学歴がどうこうではなくなって、自分のやりたいことをやっていい、と思っています。大企業に入ることだけが成功ではない、という感覚になってる人が、まだまだベンチャー企業に大企業を蹴ってでも来てくれる人が増えているという実情があると。

吉岡 増えてきていますね。

嵜本 アメリカなんかはかなり進んでいて「フェイスブックから内定をもらっても、5年前とは40%、内定承諾率が違う」という記事がありました。やはり若者が「自分らしさを追求していい」という時代に変わってきているんで、企業としてもこれまでの成功事例を参考にするのではなくて、まったくオリジナルな、自分たちならではの価値とかをキチっと発信していく。これも、メディアを通じてマーケティングではなくて、人を通じて、口コミが発生するような仕組みを作る。思わず口コミしたくなるような仕組みを作って、伝播させていくのがこれからのマーケティングではないかと。とはいえ、今は恥ずかしながらデジタルマーケティングやマスマーケを膨大な広告予算を使ってやってるんですけど、5年以内にこの広告費を違う形に使いたい。お客様に還元するとか、仕組みに十数億を使って、ファンに支えて貰う。そんな企業が残るという風に予想してるので、そこのリブランディングというか、手放すことを考えていますね。

吉岡 たとえばK-1だと「K-1を見に来る人たちはゴミが落ちていたら拾います」とか「負けた選手をヤジるようなことはしないです」とか、それが他の格闘家とのブランドの差になるんじゃないかな、という気はします。バリュエンスさんもそうですね。「このくらいの層の人たちが売買している業種で、だから偽物はないし、だから質は高い」っていう感じの人たちと生きていく方が、僕は100年続くと思いますね。自分たちはどこらへんで生きていくのか、っていうことは大切になるんじゃないか、ということを僕は最近すごく思っているんですよ。

<後編(https://www.k-1.co.jp/news/35416/)に続く>

 

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