2021.05.03

 神奈川・K-1 GYM SAGAMI-ONO KRESTにて、5月30日(日)神奈川・横浜武道館で開催される「K-1 WORLD GP 2021 JAPAN」(※5.23大田区から延期・変更)の[K-1バンタム級日本最強決定トーナメント]に出場する橋本実生と同門の先輩で第4代K-1 WORLD GPスーパー・フェザー級王者・武尊が公開練習をおこなった。

 公開練習では異例のことが起きた。当初、マススパーリングは2分1Rの予定だったが、2分間が終わった時、武尊が橋本にアドバイスを送った。「もっとガンガン出して、ポテンシャルを見せた方がいいよ!」

 武尊の提案で、急遽、マススパーリングは「第2ラウンド」に突入。武尊がジャブとキックを主体に攻め込み、橋本が1発返す展開となった。これには橋本も苦笑い。「やっぱやりづらいっす(苦笑)。練習の時だったら出来るんですけど、公開練習だと……」。それを受けて、武尊は「ホントのポテンシャルは試合で出す、ということで(笑)。今日は遠慮してましたね」と笑顔で報道陣に説明した。

 勝負のトーナメントまで3週間。武尊は「トーナメントだから、と特別なアドバイスはまだしてないです」という。「日々の練習ではアドバイスするんですけど、試合はその積み重ねなので。トーナメントはトーナメントのやるべきこととか、気をつけることはあるんですけど、やっぱり1つ1つ、ワンマッチのつもりでやるしかないので」。

 橋本は「3試合することは、スタミナとか体の面も心配はないんですけど。1回戦の相手(大村修輝)がデビュー戦なので、なんも分からんから。1回戦だけ集中する、って感じです」

 橋本は、2019年にAbemaTV(現ABEMA)で放送された「格闘代理戦争」に参戦し、チーム武尊の一員としてトーナメント優勝に貢献。武尊は当時から橋本のポテンシャルを高く評価していたが、同年のプロデビュー戦、プロ2戦目と、松本日向に連敗。昨年の第6代Krushバンタム級王座決定トーナメントでは、決勝戦まで勝ち上がったが吉岡ビギンと延長までもつれこむ大接戦の末に1-2の判定負け。思うような結果が出ない。

 武尊は「元々ポテンシャルは高かったけど『格闘代理戦争』の頃とは比べものにならないほど強くなっている」と評価し、そして「もっと成長できる」と断言する。

「デビューしてからつまづいた時もあったんですけど、それも強さに変わっていく選手だと思っています。もし順調に順調に上がっていったら、ある程度までしか行けなかったかもしれない。でも挫折とか悔しさを味わったからこそ、もっと高いところに行けると思う。僕もデビューして6戦目でKO負けして。『辞めよう』って思うほどの挫折でした。あの時の辛さって、何をやっても楽しくない。普段だったら遊んでたら楽しいのに楽しくないし、次に勝つまで、生きてる心地がしなかった。それを実生は経験したと思います。一時期、ジムにも来なくなったけど、その時に何をやっても楽しくなかったと思う。だからこそ、また格闘技に戻ってきたと思うし。それを経験してる選手は強いと思うんで。そういう強さが出るんじゃないかって思います」

 橋本も、武尊の言葉に大きくうなづいた。
「ホントに辞めようと思ってました。Krushのトーナメントの後は2~3カ月も練習してなくて。どっちが勝ってもおかしくないところで勝てへんかったから『今後やっても、チャンスをモノに出来ない。何回やっても無理やろな』と思って辞めようと思いました。で、遊んでばっかいたんですけど、全然楽しくないし。他の仕事しようと思っても出来んし」

 悩んでいた時、橋本が目にしたのが「武尊vsレオナ・ペタス」だった。
「正直、武尊さんが勝って当たり前の試合で、何のメリットもないし、那須川天心選手も見に来ていて。それなのに、ポイントを取って逃げるとかはしないで、負けを恐れず打ち合って。(レオナに)貰って、効かされながら倒して、っていうのを見て。『こうじゃないとあかんな』って思いましたね」

 そうして、橋本は進退に悩んでいた自分を恥じたという。
「いつもならやる気が出るんですよ。『俺もやらなあかん!』って。でもあの前くらいは『辞めようか、どうしようか』と思ってたくらいの時やったんで、なんか情けなく思いましたね。『こんなんで悩んでる俺、ちっぽけやな』って」

 橋本は練習に復帰。そんな後輩を見て、武尊は「格闘技の神様からの試練だ」と思ったという。
「(吉岡戦は)実生が勝ってもおかしくない試合だったと思います。ジャッジが違ってたら、実生の勝ちだったんじゃないかって。でも、あそこで負けを付けられたっていうのは、格闘技の神様からの試練ですよ。『これで満足しちゃダメだぞ。もっと成長しなきゃダメだぞ』って。だから、いい試練を与えられて、これからもっと強くなると思うんで」

 延長までもつれこみながら、僅差の勝負を勝ち切れなかった要因として、武尊は「空手からの適応がまだ完全ではなかった」と指摘する。

「実生は元々空手をやってて、顔面(パンチ)への適応がまだちょっと問題がありました。多分、空手の接戦は強いと思うんですけど、K-1での接戦になると、僕から見ても『あと一歩かな』っていうところはあるんですけど。だから、まだ完成してない状態ではあると思うんで、伸びしろがあるし、まだまだ成長するなって思ってます」

 橋本も「顔面パンチ克服」が出来ていなかったという。
「正直、3~4戦目までは、自分のファイトスタイルが全然分かってなくて(苦笑)。サウスポースタイルですけど、僕、普段は右利きなんですよ。だから『オーソドックスに変えようかな?』と思ったこともあるくらい、まったく分かってなくて。でも最近はもう整ったというか。完成したって感じです。もう何も迷いはないんで、自分のファイトスタイルを今回は見せれるかなと思います」

 武尊は、橋本の魅力として「気の強さ」を挙げる。

「練習してても、スパーしても、どんだけやられても目が死なない。ずっと強い気持ちを持ってるなってすごい感じるし。身体能力とかとは別に、格闘家として一番必要な部分というか。メンタルの強さみたいのは、鍛えてどうにかなるものではないので。元々持ってる選手だな、格闘家としてそういう星を持ってるんだろうなって僕は感じました」

 橋本は、こう自己分析する。
「すぐ熱くなって、大振りになるのは直そうと思ってますけど(苦笑)。でも、僕が熱くなると、会場も熱くなるんで、そのままでもいいかなって。そこは別に気にしてないです(笑)。こっちが熱くならないと、お客さんは盛り上がらないと思うし。歓声が聞こえると、自分もめっちゃやる気が出るんですよ(笑)。だから、最初からどんどん、打ち合おうと思ってます」

 武尊も、橋本のアグレッシブな戦いぶりを高く評価し、期待を寄せる。

「アグレッシブなところが、実生の良さだと思うし、K-1はアグレッシブさが重要になりますからね。やっぱ倒さないと上に上がれない世界だと思うんで。実生が今まで負けた試合は全部判定じゃないですか。判定でポイントを取られるんだったら、倒しちゃえばいい。1・2ラウンドを取られても、3ラウンドで倒せばいいんだし。そういう部分を、これからもっともっとパワーを付けていって、技術も付いていけば、アグレッシブに倒しに行く部分がもっと強化されて、その時に『橋本実生』っていうファイターが完成すると思う。

 あと、トーナメントは『持ってるか、持ってないか』が出てくると思うんで。K-1のトーナメントは『魔物』がいるし、K-1だからこそ輝く選手もいると思うし。今回のトーナメントは実生が『持ってるか、持ってないか』を見せる舞台なんじゃないか、と思ってます」

 橋本にとって、K-1のトーナメントはずっと憧れていた舞台だ。
「武尊さんのトーナメント、僕はまだ10代の頃に見てて。雲の上の存在のように思ってた人がやってたことを、今度は僕が5月23日に出来ることになって。武尊さんのトーナメントの試合を越える試合をせなあかん、って思ってるし。今までのトーナメントの中でも『このトーナメントが一番だ』と思って貰える試合をしないといけないと思ってます。『次のK-1を引っ張るのは実生やろ』って思って貰える試合をしないといけないと思ってます」

 武尊は「実生はチャンピオンになったらもっと輝く。このトーナメントが実生の一番いい舞台になる」と橋本の背中を押す。

「今回のトーナメントは華がある選手が多くて、みんながその華を世間にアピールできるように。強さも見せて、チャンピオンになった人がもっともっと輝いていくと思います。僕は実生にそのチャンピオンになってほしいと思うし、実生はそういう華や星を持っている選手だと思っているんで。僕は代理戦争の前からそう言ってて、実生はチャンピオンになったらもっと輝くし、格闘技界を引っ張っていく選手になれるから。だから余計にこのトーナメントで勝たなければいけないし。実生は松本選手に2回負けてて、すごい悔しい思いしてるんですけど、それもこういう大きな舞台でやり返してリベンジするための、負けは序章だったと思うし。このトーナメントが実生にとって一番いい舞台になると思います」

 橋本は、武尊の言葉にうなづき、こう締めくくった。
「武尊さんにそう言って貰って嬉しいです。今までもそういうことを言って貰っていて、全然結果を残せてないんですけど、このトーナメントを取らんと、終わりやと思ってるんで。マジで、何が何でも優勝します」

 「格闘代理戦争」の頃から、常に武尊が「持ってる」と高く評価してきた橋本が、注目のトーナメントでいよいよ覚醒なるか!?

 

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